ギャラリー

黒川紀章先生の共生の思想を大変わかりやすく雑誌で解説されていました。

私が撮影させていただいた国立新美術館とグランキューブ大阪の写真を使っていただき、光栄でした。

整理していたらこの雑誌がみつかったので、掲載しておきます。

 

 

Flower Designer
平成18年(2006年)6月5日発行

花数寄–伝統的美意識

花数寄とは日本人の美意識の代表とされる「俺び」の精神。 しかし、そこには光に対する影のごとく、一切の虚飾を排しながらも、なお相反する絢欄豪華さが息づいているー。 建築家・黒川紀章氏は、その両義性を『風姿花伝』における花になぞらえ、侘数寄(=茶室)の新解釈として花数寄と命名。 日本ならではの『共生』の思想として、広く世界に提唱しています。

哲学としての、『共生』の思想 1

私の思想の根幹には、生まれ た時代が大きく影響しています。 戦前の国粋主義社会に生を受け、大戦で空爆による都市の消滅を目撃した少年期。終戦後、自由で華やかな欧米文化に衝撃を受けるとともに、強い憧れを抱かされた思春期。同時に全否定された日本文化に強い愛着を感じざるをえない体験を持ったことが、今日へと至る第一歩となったのです。

また、私には、伝統芸術に造詣の深かった祖父と、絵や俳句を極めた建築家の父がおり、自然や芸術に対しての感受性を深める機会が多くありました。こうした環境ゆえに、なおさら日本の伝統文化に精神的な支えを見いだしたのかもしれません。日本のすばらしさを世界に知らしめたいと決意したのは、小学校5生。思いを貫き続けて、ちょうど60年がたとうとしています。

その子ども心が、のちに『共生』の思想へと結実したわけですが、直接のルーツは中学校時代。私の進学した名古屋の東海学園は、江戸時代後期に設立された浄土宗の学校で、今も教師は多くが現役の住職です。在学当時の学園長は、東京・増上寺の管長でもあった故・椎尾弁匡先生。東大インド哲学出身の仏教哲学の権威であり、また仏教界の思想的指導者としても高名な師は、さらに、”ともいき(共生)仏教会”の創設(大正11年)者でもあります。

大乗仏教の基本的考えである、”ともいき”。宗教としての仏教には関心がなかったものの、 椎尾先生の講話など授業のなかでその思想に触れるにつれ、人生論として考えるようになったのは自然な流れでした。『共生』の思想は、この頃から芽吹き始めていたわけです。椎尾先 生の、”ともいき”は仏教哲学です が、私の提唱している『共生』は、大きな意味での文化や社会のあり方への指針。アリストテレスからカント、デカルトまでの西洋哲学とは違う、東洋、そして 日本ならではの哲学思想なのです。

キリスト教社会の生んだ文明は、二元論に代表される合理主義が特徴です。理性が重視され、科学や経済の発展も速く、世界をリードしてきました。しかし、 『共生』は文明よりは文化を土台にした思想です。固有の伝統や 歴史、風土や地域性を考慮し、相反するものを含み”共に生かす”ことこそが、次代へのキーワードになり得るはず。私は建築家ですので、思想を都市設計や 建造物で語ります。各国の大学では哲学科で講義することも珍しくはありません。『共生』が哲学思想であることを物語っているといえます。

西洋の物質文明が行き詰まりを迎えつつあるこの先は、数寄屋に活けられた花一輪に大きな世界観が隠されているような、日本発の精神文化が花開くと考えています。

■ 国立新美術館

人工と自然・都市と自然の共生

今、東京・六本木にその全容を現しつつあるのが、2007年1月オープン予定の国立新美術館です。これは黒川氏の最新作品で、その姿は、曲線のハーモニーともいうべき優美なもの。雲や波など、自然界の造形をイメージさせる、うねるようなガラス壁が目を奪います。中に入れば、床はすべて木を使用。透明ガラスを通して青山公園の森が見え、何の説明をされずとも、人工と自然が共生していることを実感させてくれます。「鉄やガラスという硬質なイメージの工業製品と、自然が生んだ木という生き物との、共生をめざしています。とくに床はどうしても木にしたかったので、東南アジアからアイアンウッドという、叩いてもへこまないくらい堅く腐らない木を探してきました。透明ガラスを採用したのも、森の中の美術館というコンセプトを考慮したからです。

再開発が進み、新たな文化都心となるであろう六本木だけに、美の発信基地としての存在であることも重視。人工と自然、 都市と自然の共生を、何よりも大切にしています」

さらに、この新美術館の敷地は2・26事件を起こした将校たちが出発した司令部跡地であり、当時の建物の一部も保存。黒川氏は、わざわざこの司令部の一部を残して設計し、歴史と現代の共生をも実践しているのです。

■ グランキューブ大阪

環境と自然の共生

大阪・堂島川のほとりにそびえるグランキューブ大阪。日本フラワーデザイン大賞 2007が開催されるこの建物も黒川氏が手がけたものです。大阪府立国際会議場として、大小の会議室や各種の多目的ホール、レストランや駐車場など、かなりの総面積が必要な施設でありながら、繁華街に位置するゆえに限られたスペースしか使えない。その難問を解いた答えが、重箱のように重ねることだったといいます。

ホールには、柱を使えません。そのためコア柱を6本建てて、上へ上へと積み重ねた結果が、この独特の偉容を生んだのでしょう。「一番苦労したのが、公園がほしいという地元の要望でした。これも重箱の一番下(=1階)を周りの風景の見える広場にし、木を植えて、自然との共生を実現。植物を生かすには光・土・水が必要なので、光ファイバーで屋上から太陽光を採り、30分に1回は霧を散布するなど、日々努力を重ねています。そもそも台風や地震、洪水など、自然の力の前に人はもろいものです。反面、人が都市を造れば、自然は壊れてしまう。互いが脅威であるからこそ、共生の思想が文化の根本をなすべきなのです」 共生の実践

1 国立新美術館(2006 年3月撮影。工事中)

2グランキューブ大阪 (大阪府立国際会議場)

PHOTO by 齋藤貞幸

黒川紀章

協力/(株)黒川紀章建築都市 設計事務所

PROFILE 黒川紀章Kisho細rokawa

建築家。日本芸術院会員。1934年 愛知県生まれ。57年京都大学卒業。 64年東京大学大学院博士課程修了。(株)黒川紀章建築都市設計事務所 代表取締役。アメリカ建築家協会名誉会貝、英国王立建築家協会名誉会員。65年高村光太郎賞、78年毎日芸術賞、86年フランス建築アカデミーゴールドメダル、88年リチャー ド・ノイトラ賞(米)、89年世界建築ビエンナーレ・グランプリ・ゴールドメ ダル、フランス芸術文化勲章受章、 90年日本建築学会賞、92年日本芸術院賞、99年東京都文化栄誉章受賞など。

 

以下は私の以前の記事です。

国立新美術館

グランキューブ大阪

 

 

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