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センター試験に代わる新しい入試方法が検討されています。ご参考にご覧下さい。

朝日新聞DIGITAL  (2014年)より引用

 

センター試験に代わる新しい大学入試は、今の小学6年生から対象になりそうだ。大学の個別試験での評価基準も順次変わっていく。だが、何が評価されるのかわからない高校や予備校は受験対策に戸惑う。入試を課す大学は、評価の基準作りに知恵を絞る。

 「学習計画立てられぬ」 

「センター(試験)形式の正誤問題です。いつも通り30問やってみましょう」
各地で最高気温が30度を超える真夏日となった8月上旬、東京都内有数の進学校都立西高校(杉並区)では、3年生が夏休み返上で大学受験に向けて補習を受けていた。
選択式の大学入試センター試験や、大学の個別試験で、まず問われるのは基本的な知識。西高校の受験対策も暗記が重要な柱の一つだ。だが今後は、こうした対策だけでは合格できなくなるかもしれない。
センター試験の後継となる達成度テストの発展レベルは、一部で教科ごとの枠にとらわれない設問を想定している。例えば、ワインについての文章を読みながら(国語)、発酵に関する問い(化学)やローマ帝国の歴史(世界史)について解答する――。
宮本久也校長は「丸暗記の時代は終わったと先生や生徒に言っている」と話す。ただ、「大学が具体的に何を評価するのか、情報公開の姿勢が問われる」とも指摘する。補習を受けていた3年の加藤蒼(あおき)さん(17)も「求められる能力の中身が分からない」と話した。
東京大を目指して東京都内の予備校に通う男性(19)は「○か×か。客観的な基準で判断されるから不合格でも納得できる。新しい入試は公平さが保たれるのか」と心配する。難関国立大を志望する巣鴨高3年の男子生徒(18)は「必要とされる能力が分からないと、学習計画の立てようがなく受験生の負担も増えるのでは」と話した。
こうした受験生の不安に応えようと、大手予備校の河合塾では対策に乗り出している。数学と理科の講師が、教科の枠を超えたテスト問題作りや指導方法を話し合っているという。教育情報部の近藤治部長は「偏差値という1本だった物差しが、様々な物差しに変わる大転換。出題を予想し、受験生や高校に示していくのも予備校の役割だ」と話した。

 評価の基準作り検討も 

「受験生に納得してもらえる評価の観点を示し、優秀な人材を確保したい」。愛媛、香川、徳島、高知、鳴門教育の5国立大は共同で「多面的な評価」の基準作りを始めた。インターネットでの出願時に「高校時代に頑張ったこと」を書いてもらい、評価の材料にすることを検討中だ。
「高校生活をトータルに充実させた人が評価される入試」。愛媛大の井上敏憲(としのり)教授は新しい入試を、そう言い換える。高校で受けた授業、英検などの資格取得状況、部活動の取り組み、人間性……。井上教授は「こうしたものが評価項目の案として考えられる。(生徒に)もっと色んなことに時間を使ってほしい」と話す。5大学で評価項目をまとめた上で、各学部が求める学生像に合わせて評価の比重を変える案も提案する。
九州大(福岡市)法学部はユニークな人材を面接や小論文で見つけようとAO入試を導入したが、2009年にいったんやめた。法学部の五十君(いぎみ)麻里子教授は「入学後のカリキュラムがほかの学生と同じでは、差が出なかった」。
だが、来春から復活させることに。今度は「入学後」にも力を入れ、「少数精鋭のグローバルエリート」を育てるという。定員10人。5年間の一貫教育で、最後の1年間は授業や課題はすべて英語だ。「養成する人物像を明確にせず、手法だけ多面的、総合的評価にしても意味がない」

 センター試験後継、21年度にも 

大学入試改革は昨年10月、政府の教育再生実行会議が「能力・意欲・適性を多面的、総合的に評価する」と提言。面接での受け答えや高校時代の活動歴などを重視することを大学に求めた。センター試験についても知識の暗記だけでは解けない「考える力」をみるものに転換することも掲げた。これを受け、中央教育審議会が議論を開始。今年6月には答申案をまとめ、大学側が学生の意欲や適性を正しく把握できるような新しい評価手法の開発や専門人材の育成を国に求めた。センター試験改革では、様々な教科の知識を活用して解く「達成度テスト」を早ければ2021年度にも導入することを提案した。
中教審は秋にも答申をまとめたい考え。その後大学側は自校の入試見直しに力を入れるとみられ、16年度以降の入試で徐々に影響が強まる可能性がある。

 半数以上「客観性を」(「ひらく 日本の大学」朝日新聞・河合塾共同調査) 

「ひらく 日本の大学」調査では、すでに56%の大学が多面的・総合的な評価による入試を「行っている」と答えた。作文や面接などで選考する「AO入試」を念頭に回答したとみられる。ただ、このうち83%が「改善する必要がある」と答えた。
調査では、多面的・総合的な評価を共通試験として実施することについても聞いた。「実施すべきだ」「実施の方向で検討すべきだ」が56%で、半数以上が評価基準を共通化し、公平性や客観性を担保すべきだと考えていた。